読者から以下のご質問を頂きました。

お名前:タッキー

性別:男性

年齢:60代

題名:ポンプ使用時のカーボカウント

メッセージ本文:

インスリンポンプを検討中の69歳、男性です。

先ず、私の病歴を述べます。

昨年11月末に1型糖尿病を発症しました。 発病した経緯は、腹痛から嘔吐が3日間ほど続き、日曜の夕方急激に体調が悪化、このまま月曜の朝まで待てないと判断し、病院に駆け込みました。いろいろな検査に5時間ほどかかり、深夜に入院になりました。その数時間後に容体が急変し(血圧が50以下、血糖値が1000超)、ICUに移されました。容体が急変してから3日間は意識がありませんでしたが、幸い、医療チームの適切な処置により、死線(心肺停止直前)から回復しました。

主治医から「劇症1型糖尿病に罹り、糖尿病ケトアシド-シスを発症していた。退院後は通常の生活に戻れるが、膵臓からインスリンが全く分泌されないので、注射(ペンタイプの持効型と超速効型の2種類)に依存することになる」と告げられました。また、「君ならインスリンポンプを使いこなせると思うので、1年後くらいにポンプ(SAP)にしましょう」と提案を受けました。さらに、入院中に、ポンプを利用している患者さんを紹介され、使用感を直接聞き、ポンプに触る機会も得ました。

約3週間の入院を経て、日常生活に戻りました。

退院時に、主治医から「指定した単位を絶対に変更しないように」との注意があり、注射したインスリン単位に合うように食事を選ぶ生活が始まりました。退院直後から、妻の協力で食事の内容を記録しています。この記録を「献立ノート」と呼んでいます。血糖値は、食前の3回と眠前の1回の合計4回を毎日測定しています。

退院1ヶ月後のa1cは8.1%、平均血糖値は249です。この受診時、主治医から「かんたんカーボカウント」(医薬ジャーナル社)を渡され、「これを読んで、次回の診察までに、試しに何回かインスリンの単位を変えてみる」との指示を受けました。そして、献立ノートにカーボ量を記入することをアドバイスされました。

渡された本の熟読後、カーボカウントを開始しました。1ヶ月後(退院後2ヶ月)のa1cは8%、平均血糖値は153でした。この期間、すべての食事についてカーボカウントを行いましたが、実際にインスリン単位を調整したのは6回にとどめ、計算したカーボ量と注射したインスリン単位、血糖値の変化を確認しました。これは、自分の学習期間でした。

この後、本格的にカーボカウントを行い、測定した血糖値からインスリン単位を調整しています。この結果、退院3ヶ月後のa1cが7.5%、平均血糖値が146、退院5ヶ月後のa1cが7%、平均血糖値が136と改善しています。

退院後しばらくは、ポンプに憧れのようなものを持っていました。というのは、ポンプにより、高血糖を避けられる(合併症の心配が無くなる)、食事の内容に気を遣うことから解放され食べたいものが食べられるようになる、外出時に注射する場所を探し注射するタイミングを気にしなくて良くなるとの思いです。でも、ポンプのデメリットも理解してきたので、このまま、インスリン注射を続けても良いかなとも考えています。ただ、まだ決めかねているのが実情です。

前置きが長くなりました。教えていただきたいことを書きます。 現在行っている「血糖値の測定→カーボカウント→インスリン単位の決定」の課題は、かなり正確にカウントし、インスリン単位を決めないと、血糖値が大きく変動することです。そのため、食事に炭水化物がどれだけ含まれているかを考え、食べたものとインスリンの量が合っていたか(インスリンを打ち過ぎて低血糖にならないか、あるいは、不足して高血糖にならないか)をいつも気にしています。

ポンプの場合もカーボカウントをすることが前提になることは理解していますが、カーボカウントをある程度適当に行っても大丈夫なのでしょうか? 言い換えると、ポンプの場合はCGMでリアルタイムで血糖値を把握できるので、食事に含まれる炭水化物をきっちり把握しなくても(アバウトなカウントで)、食事後にポンプが自動補正(あるいは手動で補正)することになるのかな、と考えています。 両者間のカーボカウント内容の違い(どのくらいの正確さでカウントする必要があるのか)を教えてください。 よろしくお願いいたします。

回答:

ご質問をいただきまして有難うございました。

糖尿病性ケトアシドーシスを発症、その後1型糖尿病と診断され、当時はさぞご不安な時期が続かれたことと思います。「かんたんカーボカウント」の本を使って勉強され、奥様のご協力のもと「献立ノート」もお使いになられていらっしゃるとのこと。

ここには記載されておりませんが、「献立ノート」はどのようにご活用されているのか、は知りたいところです。

退院後から、カーボカウントも学習され、HbA1cも徐々に下がっていらっしゃるので、何よりかと思います。また、インスリンの注射で7%のHbA1cを達成されていることは素晴らしいことだと思います。ちなみに私の最高記録は7.3%だったと思います。

インスリンを打ち過ぎていないか、とか、不足して高血糖にならないか、などはSAPと呼ばれるリアルタイムCGM付きのインスリンポンプをご使用されている場合でも気になることかと思います。ただ、CGMだけでなく、インスリン注射でも使えるフリースタイルリブレも、血糖値を点ではなく線で見ることができるので、血糖値のトレンド(いわゆる血糖値が上昇傾向なのか、下降傾向なのか)を見れるのは大変有意義ではないか、と思います。しかし、どちらの機器も値は絶対ではないので(ちょっとマニアックな測定器のいま(3)の記事もご覧ください)、私の体験からですが、正確なカーボカウントの必要性は、インスリン注射でもインスリンポンプでも、どちらも同じくらい必要ではないかと思います。

また日本では血糖値を自動補正してくれる類のインスリンポンプは認可されておりません。余談になりますが、世界には、低血糖が起きればベーサルを自動停止する機能があるインスリンポンプを使用できる国もあります。

ただし、ポンプには、注射ではできない色々な利点があります。例えば、以下のようなことです。

  1. 現在、どのようにして、カーボ量からインスリン単位を決めているのか(たとえば、紙に食事のカーボ量を書いて、ご自身のインスリンカーボ比と照らしあわせて、計算されていらっしゃるとか)、その点は記載がないのでわかりかねますが、インスリン単位の計算作業は結構面倒でいらっしゃるのではないか、と推察致します、ただ、インスリンポンプなら設定さえしておけば、あとは食べるカーボ量を入力すると、あなたに必要な追加インスリン量をポンプが計算してくれます。そして必要なインスリン単位数を表示してくれる点は便利かと思います。追加打ち、などと呼ばれる高い血糖値を正常値に補正するときも、インスリン効果値を使って必要なインスリン量も計算してくれますので、面倒な計算は必要ありません。
  2. 私自身が感じる点として、もちろんポンプの利便性もありますが、インスリンポンプの最大の長所は、インスリン注射では持効型溶解インスリンに当たるbasalの調整が細かく設定できることだと思います。言い換えれば、インスリンポンプはより人の膵臓に近いような、Basalインスリンの注入になります。そのBasalも超速効型のインスリンを使い、ちょこちょこ体に注入してくれます。そして、Basalも超速効型インスリンが使われることにより、インスリン製剤も一種類で良いのです。
  3. さらにボーラスでも、食事の際のインスリン量を決めて、ポンプに指示を出す際に、一気に体内に注入する設定だけでなく、長い時間をかけて体内に注入するよう設定することもできます。

そして、そこまで勉強されていらっしゃるのであれば、ポンプを十分に使いこなされるはずですので、DrのおすすめするSAPを一度使われてみて、ご自身でポンプか、注射か、どちらが自分に合っているのかを実体験されてみるのもよいことではないかと思います。カーボカウントと食事の記録とインスリン単位に続きます。

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